ほとんどのご父兄は「子供がその気になるために、自分も変わるようにしよう」という意見にご賛同下さるでしょう。
しかし以前、「子供がその気になるためには、自分が変わらねばならない」という発想がなく、子供の成績向上のお膳立てはすべて指導に当たる者がしてくれるもの、というお考えのご父兄がいらっしゃいました。
当該生徒さんは、250人中、200〜230番くらいの席次の中学生で、あまり志気の高くない生徒さんでした。
お母様がその生徒さんの成績をとても気にする方で、試験の結果が出るたび、「どうしてうちの子供は成績が上がらないんでしょうか」と、細かくきいてくる方でした。
ある日、こんな会話がありました。
お母様 「うちの子、さっぱり成績が上がらないんですけど、どうしてなんでしょうか?」
菊池 「いろいろ原因はあると思います。数学などは小学校の基本の基本の部分がかなり抜けており、まだ穴は埋まっていませんし、かなり時間がかかります。また〇〇君の場合、見ているとどうも取り組む姿勢が熱心でないようですね。」
お母様 「『ちゃんとやりなさい』と、ことあるごとに言ってるんですが。それでもなかなかきちんとやらなくて」
菊池 「そうですか。『ちゃんとやりなさい』だけだと、なかなか生徒さんはやらないものです。少しでも取り組んだときには、『よくがんばってるね』とか、褒めてあげてはどうですか?」
お母様「『褒める』と言っても、足りないものは足りないんで、褒められません。それにしっかりと勉強をしてほしいんで。褒めて甘やかすというのはしたくないんで.....」
菊池 「(「褒める」ことと「甘やかす」ことは違うのではないかと内心では思いながら)そうですか。では子供がその気になるためのやり方を書いた本をお読みになるとか、ネットで検索してもいろいろと情報が出てきますよ」
お母様 「そういうのは、こちらでやらなければいけないんでしょうか? 成績が上がるようにということで、こちらはずっとお願いしているわけですし、そういうことを含めての月謝だと思うのですが.....」
「褒める」ことと「甘やかす」ということは違いますが、アメとムチという言葉があるように、年中ムチばかりあてられていては、子供がその気にならないのは道理です。
子供の成績が上がる=その気になるには、親の役割、家庭教師の役割、それぞれ持ち分があります。
それらが補完し合ってこそ成果が出ます。
子供がその気なっているご家庭のご父兄はみなその点をよく理解なさっています。
くだんのご家庭はその点についてご理解がなく、わたしが「子供がその気になるためのやり方を書いた本をお読みになるとか、ネットで検索してもいろいろと情報が出てくる」とお伝えしたことを、「家庭教師としての仕事をしっかりやっていない」「子供の成績不振を親の方に転嫁し、責任を逃れようとしている」と受け取ったようです。
その後、そのご家庭は上記のやり取りがあってからすぐ、生徒さんが中3の12月で指導終了となりました。
ちなみにそのご家庭は、家庭教師が2年間で、わたしで3人目ということでした。
ご父兄の考え方が変わらない以上、子供がその気になることは望むべくもありません。